鳥飼補助き電区分所・新鳥飼変電所のき電系統(運行時間帯・ATき電線は省略)
鳥飼補助き電区分所は東海道新幹線の京都～新大阪間に設置され，新高槻変電所から山陽新幹線の新塚本き電区分所までの区間の補助的なき電区分を行うとともに，本線のき電系統と鳥飼車両基地，新鳥飼変電所のき電系統を相互に接続・区分する役割を併せ持っています.
開業当初は鳥飼き電区分所として設置されましたが，ATき電化に伴う変電所削減の一環で新大阪変電所の本線へのき電機能が廃止となった関係で補助き電区分所に格下げされた経緯を持ちます．新大阪変電所はその後も引き続き鳥飼車両基地への深夜帯の電力供給，および本線の電車線電圧安定化の役割を担っていましたが，新大阪変電所から鳥飼車両基地へのケーブルが約7kmと長かったうえ，変電所の設備やケーブルが更新時期を迎えたこともあって，2011年に鳥飼車両基地の一角に設置された新鳥飼変電所へその役目を譲って完全に廃止になりました．
(参考：東海道新幹線のATき電化・電源増強に伴う変電所・き電区分所の変遷)
新鳥飼変電所は本線列車運行時間帯は外部からの77kV電源は受電せず，変電所内のRPC(き電側電力融通方式電力補償装置)によって車両基地内，さらに鳥飼補助き電区分所を通して本線の電車線電圧安定化を行っています．
鳥飼補助き電区分所・新鳥飼変電所のき電系統一方，本線列車運行が終わった深夜帯は外部電源から受電した77kVを30kVに降圧し，さらにRPCによってスコット変圧器のT座とM座の間で電力融通を行ったうえで車両基地内に供給しています．
鳥飼補助き電区分所・新鳥飼変電所のき電系統
1) 鳥飼補助き電区分所のほぼ全景．
2) 鳥飼補助き電区分所の銘板．
5) 線路の反対，北側から見た鉄構．
6) 所内の機器の様子(下り線側)．トロリー線(T)，ATき電線(F)，中性線(N)それぞれのアルミ製と思われる母線があり，そこに断路器類が接続されています．
7) 上り線側と下り線側の母線を結ぶ負荷開閉器と思われる機器．投入状態になっていることから，鳥飼補助き電区分所では通常は上り線・下り線を接続した上下タイき電が行われているようです．
8) 下り線側の単巻変圧器(AT)．両端の長い端子がそれぞれトロリー線とATき電線に，真ん中の短い端子が対地電圧が低い中性線に接続されています．
9) 所内の機器類の様子(上り線側)．
10) 下り線博多方のトロリー線へのき電線接続部．鳥飼補助き電区分所のすぐ近くにあります．
11) 上り線博多方のトロリー線へのき電線接続部．下り線と同じ場所にあります．
12) 鳥飼補助き電区分所付近から東京方を眺めたところ．通常の上下線のATき電線(F)に加えて，上下線それぞれの東京方のトロリー線へのき電線がエアセクションの先まで延びています．通常補助き電区分所のエアセクションは設備からそう遠くない所にあることが多いですが，鳥飼補助き電区分所のエアセクションは設備から下り線は1.8km，上り線は2.0kmほど離れています．
13) 鳥飼補助き電区分所とエアセクションの間のき電線の様子．ATき電線(F)と東京方のトロリー線(T)が並んでいます．
14) 下り線のエアセクション．
15) 下り線東京方のトロリー線へのき電線接続部．
16) 鳥飼補助き電区分所から分岐する鳥飼車両基地のトロリー線(T)へのき電線．
17) 鳥飼車両基地へのき電線(T)とレールに接続される中性線(「N」と標記されることが多いですがここではレールの「R」となっています)は鉄構から博多方へ向かって延びています．
18) 鳥飼補助き電区分所から1.4kmほど博多方へ進んだ，鳥飼車両基地の真横にあたる地点．鳥飼補助き電区分所から延びて来たトロリー線(T)と中性線(R)に加え，上り線のトロリー線と中性線(AT保護線)から分岐した電線，合わせて4本の電線が奥の車両基地構内の方向へ延びています．
19) 上り線のトロリー線・AT保護線から車両基地への分岐部を別の角度から見たところ．
20) 電線が車両基地内の上を渡る部分には「高圧注意」の標記があります．
21) 鳥飼車両基地構内を本線とは反対側，大阪貨物ターミナルの構内越しに見たところ．鳥飼補助き電区分所と本線からのき電線が車両基地内の鉄構に接続されています．
22) 鳥飼補助き電区分所と本線から分岐したき電線の拡大．
23) 鉄構を通ったき電線は敷地の手前の方に延びた後，車両基地内の北東の方角(左側)へ曲がります．
24) 先ほどのき電線は鳥飼車両基地内の北東角に設置された新鳥飼変電所に接続されています．
25) 新鳥飼変電所の建屋．
26) 新鳥飼変電所に設置されたRPC(Railway static Power Conditioner: き電側電力融通方式電力補償装置)用の変圧器と思われる機器群．
27) 鳥飼車両基地の出入口付近にある本線のトロリー線と中性線(AT保護線)の分岐部．
28) 鳥飼車両基地内から延びて来たケーブルと出入庫線のき電線を接続するケーブルヘッド．
29) 鳥飼車両基地構内の出入口付近にあるき電線の開閉設備．本線側と車両基地側のき電系統を接続・区分するためのものと思われます．
30) き電線開閉設備の拡大．ケーブルヘッドや断路器で構成されています．
31) 出入庫線のき電線と本線下り線のトロリー線を接続する負荷開閉器と思われる設備．通常は開放状態のようです．
32) 出入庫線が本線と合流する手前にある鉄構．出入庫線のトロリー線とき電線が断路器を介して接続されています．奥には出入庫線と本線を区分する同相型の碍子型インシュレータが見えます．
33) 碍子型インシュレータを拡大して見たところ．先ほどのトロリー線はインシュレータから先のトロリー線に接続されています．
34) 出入庫線が本線に合流する直前にはエアセクションもあります．出入庫線と本線の架線が2つのセクションで二重に区分されているのは，おそらく断路器を操作することで出入庫線の本線合流部手前にデッドセクションを形成できるようにするためと思われます．
35) 東海道新幹線が計画されていた当初は貨物輸送を行う計画もあったようで，大阪側のターミナルとして鳥飼車両基地の隣に貨物駅が出来る予定だったようです．鳥飼車両基地の東京方，鳥飼補助き電区分所の付近で本線上下線からそれぞれ分岐し，下り線からの分岐線は本線を跨いで北側に移り貨物駅に入る計画だったようで，実際に分岐線が本線を乗り越す二重高架橋も作られましたが結局上段は一度も使われることはありませんでした．取材した2015年末の時点では取り壊しの工事中だったようで，2024年の現在は下段の一部は残るものの，本線に覆いかぶさっていた部分は無くなっています．
36) 解体工事中の貨物駅への分岐線(未成線)乗り越し部を反対型から見たところ．
37) 鳥飼補助き電区分所の近く，東京方には本線からの分岐部と思われる張り出し部が残っています．先ほどの乗り越し部との間に鳥飼補助き電区分所がありますが，当初の計画通り貨物駅が作られていれば分岐線は補助き電区分所と干渉する位置関係になっているため，その場合は補助き電区分所は高架下などに作られることになってと思われます．
38) 鳥飼車両基地の入口を中央環状線の歩道から見たところ．当然これより奥の敷地内には一般人は入れませんが，取材当日も入口前で親子連れなどを中心とした見物客を何組か見かけました．多数の新幹線車両が並んでいるのを間近に見ることが出来るとあって地元では人気のスポットのようです．
39) 鳥飼車両基地は東海道新幹線の京都～新大阪間にありますが，JR西日本・九州の山陽・九州新幹線の車両も折り返し整備などで入庫するため，N700系山陽・九州新幹線用の編成や700系レールスター，そして先日2027年頃の引退予定が発表された，現在も人気が高い500系など，東海道新幹線区間を走らない車両を見ることも出来ます．
40) 鳥飼車両基地の北隣にはJR貨物の大阪貨物ターミナル駅があります．前述の新幹線で貨物輸送を行う計画で大阪側の貨物駅として整備する予定だった土地を活用したもので長大なコンテナ列車が出入りしていますが，そのそばにある公園には初代0系新幹線と貨物機として活躍したEF15電気機関車が保存されています．
41) 保存されている0系先頭車のナンバープレート．
42) 0系先頭車の連結面側．現役時にはあまり間近では見ることは出来なかったアングルです．
43) 0系先頭車の運転席の様子．取材当時車内には入れませんでしたが，運転席や機器類もある程度は保存されているようです．
44) 0系先頭車の隣に保存されているEF15電気機関車．
45) 大阪貨物ターミナル駅構内を入換運転中のEF510電気機関車．大先輩であるEF15が静かに休む横を通り過ぎていきます．
46) 鳥飼補助き電区分所のすぐ近くには関西電力の新鳥飼変電所があります．変電所内には上部に154kV，下部に77kVの多数の回線を支持した鉄塔が2つ並んで立っていますが上部がビームで結合されており，2つの鉄塔の間に横に張られた電線と上部のビームから地上に向かって縦に張られた電線がジャンパ線で接続された独特な外観をしています．一部鉄塔ファンの間では「関電落とし」と呼ばれて人気のようです．
47) 「関電落とし」鉄塔の下部．引き下ろされた電線がケーブルヘッドを介して所内の変電機器，あるいは外部への地中線に接続されています．
48) 関西電力の「新鳥飼変電所」の銘板．鳥飼車両基地内にあるJR東海の「新鳥飼変電所」と同名なのが面白いですが直接の関係はありません．ただし，JR東海の「新鳥飼変電所」は本線が停電する深夜帯の車両基地内への電力供給のために外部から77kVの供給を受けており，両者の位置が近いことから供給元がここである可能性はあります．