東海道新幹線　新大阪変電所(廃止)

　現在，東海道新幹線で本線に走行用の電力を供給する変電所のうち最も新大阪寄りに設置されているのは新高槻変電所ですが，かつては新大阪駅の近く，おおさか東線から分岐して吹田信号場(現　吹田貨物ターミナル駅)へ向かう城東貨物線の神崎川を渡った地点に新大阪変電所が設置されていました．その後，1986年に東海道新幹線のき電方式がBTき電方式からATき電方式に変更された際に本線のき電用変電所としての役割は廃止となり，それ以後は列車運行終了後の深夜帯に鳥飼車両基地へ電力を供給する役割，および所内に設置されたSVC(静止型無効電力補償装置)によって本線の電車線電圧を安定化する役割を担っていました．新大阪変電所から約7km離れた鳥飼車両基地までは城東貨物線と東海道新幹線の線路脇に設置されたケーブルで送電していました．

　その後，新大阪変電所の設備や鳥飼車両基地までのケーブルが取り替え時期を迎えることになりましたが，それを機に鳥飼車両基地への電力供給と本線の電車線電圧安定化の機能を鳥飼車両基地の北東角に新設された新鳥飼変電所へ移設し，新大阪変電所と鳥飼車両基地への送電ケーブルは廃止されました．現在，新大阪変電所があった場所は更地になっていますが，城東貨物線を旅客化したおおさか東線の北半分の区間，放出～新大阪間が2019年3月に延伸開業した際に変電所跡のすぐ近くに南吹田駅が出来たことから，今後は何らかの形で跡地の活用がされるものと思われます． 　

• 1)　新大阪変電所の正門．
• 2)　新大阪変電所の銘板．
• 3)　新大阪変電所の受電側の設備．関西電力から地下ケーブルで三相77kVの電力を受電していました．ケーブルヘッドは2回線分ありましたが，奥側の1回線は取材に訪れた2005年当時，既に使われていなかったようです．
• 4)　新大阪変電所の構内の鉄構(その1)．上り線・下り線それぞれのATき電線(F)およびトロリー線(T)の表示がありました．
• 5)　新大阪変電所の構内の鉄構(その2)．「M座」の表記があることから，三相77kVから単相60kVへの変換は東海道新幹線の他の変電所同様にスコット変圧器で行われていたようです．
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  き電線の色分け(:表示 :非表示)
  (F: ATき電線，T: トロリー線)
  F下り T下り F上り T上り
  
  6)　新大阪変電所からの出力は城東貨物線の線路脇のトラフに収容されたケーブルで神崎川を渡って南へ向かい，東海道新幹線との交点まで延びていました．交点にはケーブルヘッドを持った鉄構があり，上り線・下り線それぞれのATき電線(F)とトロリー線にケーブルヘッドを介して接続されていました．一方，鳥飼車両基地への出力は東海道新幹線の線路脇に設置されたケーブルで送電されていました．現在はこれらのケーブルヘッドの鉄構やケーブルは完全に撤去されています．