本項では山陽新幹線の新庄き電区分所の異相区分切替セクションについて説明しています.
山陽新幹線の新庄(しんしょう)き電区分所は岡山~新倉敷間,岡山駅から約10kmほど博多寄りにあり,通常時は新上道変電所と新鴨方変電所のき電境界となっており,他の新幹線のき電区分所と同様に異相区分切替セクションを持つ設備となっています.
新幹線に限らず鉄道の変電所やき電区分所の設備名はその設備の所在地や最寄り駅の名前から取られることが多いですが,最初に建設された東海道新幹線は並行する東海道本線などに同名の既存設備がある時に頭に「新」が付きます(新横浜変電所,新米原変電所,新高槻変電所など).
一方,山陽新幹線以後に建設された新幹線の変電所やき電区分所は現時点では同名の既存設備の有無にかかわらず全て「新」が付いています(ただし,当初は在来線の海峡線として開通した北海道新幹線の今別変電所・竜飛き電区分所・吉岡変電所を除く).
新庄き電区分所は岡山県倉敷市内の「庄(しょう)地区」に設置されており,庄地区に隣接する「中庄(なかしょう)地区」には山陽本線の中庄駅があります.そのため,「庄地区にある新幹線のき電区分所」ということで「新庄(しんしょう)き電区分所」という名前になったものと思われます.
「新庄き電区分所」という名称の設備はJR東日本管内にもう1ヶ所存在します.JR東日本 奥羽本線にある新庄(しんじょう)き電区分所で,山形県新庄(しんじょう)市の中心駅である新庄駅の構内の一角にあり,羽前千歳変電所と院内変電所のき電境界となっていました.奥羽本線の福島-新庄間はいわゆる「山形新幹線」の乗り入れ区間のため標準軌(1,435mm)に改軌されており,新庄から大曲までの狭軌(1,067mm)区間とは線路が繋がっていないため,交流電化区間のき電区分所でありながらデッドセクション(異相区分交交セクション)を持たない珍しい設備となっていましたが,2024年7月に発生した大雨災害のため奥羽本線の新庄-院内間が長期間運休となった後に2025年4月25日に同区間が非電化路線として復旧・運転再開されたことで院内変電所からのトロリー線,ATき電線の接続が無くなり,き電区分所としての機能は実質的に廃止状態となりました.近い将来不要設備となっている延長き電用の遮断器などの機器を撤去した上で今後は福島側の電化区間末端のATポストとして運用されるものと思われます.
1) 新庄き電区分所を線路の高架下から見たところ.
2) 新庄き電区分所の正門.
3) 門の左側に銘板があったものと思われますが剥がされた跡があります.
4) 新庄き電区分所構内にある地震計を収めた対震ハット.「ハット」は某ピザ店と同じく帽子ではなく「小屋」の意味だと思われます.敷地外から見える部分で「新庄」の名前を確認できるのはここだけです.
5) 新庄き電区分所構内の電力機器.
6) 新庄き電区分所構内の電力機器.延長き電用の機器などが並んでいます.
7) 延長き電用,あるいは上下タイき電用の遮断器と思われる機器.
8) き電区分所の心臓部,異相区分切替セクションの切替用開閉器(建屋内に収納)に繋がるブッシングと断路器.上り線・下り線それぞれに予備用も含めて2組ずつ設置されています.
9) 切替用開閉器を収めた建屋の扉.「切替遮(しゃ)断器」とも呼ばれるようです.
10) 敷地の西側から見たき電区分所.高いブロック塀に遮られて構内の様子はあまり見えません.また北側は住宅,東側は企業の敷地,南側には切替用開閉器の建屋があるため構内の様子を観察できるのは正門付近など南側からのごく一部に限られています.
11) き電区分所から引き出されたき電線群.切替用開閉器の建屋の真上を越えて高架上の鉄構に延びています.

14) 下り線異相区分切替セクションの入口側のエアセクションを隣接する公園から見たところ.
15) 下り線異相区分切替セクションの入口側のエアセクションを高架下から見上げたところ.
16) 下り線異相区分切替セクションの入口側エアセクションの新大阪側の架線絶縁部.
17) 下り線異相区分切替セクションの入口側エアセクションの中セクション側の架線絶縁部.
18) 下り線新大阪方のトロリー線へのき電線接続部.
19) き電線鉄構にある下り線異相区分切替セクションの中セクションのトロリー線へのき電線接続部.
20) 下り線異相区分切替セクションの出口側のエアセクション.
21) 下り線異相区分切替セクションの出口側のエアセクションを線路北側から見たところ.
22) 下り線異相区分切替セクションの出口側エアセクションの中セクション側の架線絶縁部.
23) 下り線異相区分切替セクションの出口側エアセクションの博多側の架線絶縁部.
24) 下り線博多方のトロリー線へのき電線接続部.
25) 上り線異相区分切替セクションの入口側のエアセクション.入口側半分は倉敷トンネル内に隠れています.
26) 上り線異相区分切替セクションの入口側エアセクションの中セクション側の架線絶縁部.
27) 上り線博多方のトロリー線へのき電線接続部.
28) き電線鉄構にある上り線異相区分切替セクションの中セクションのトロリー線へのき電線接続部.
29) 上り線異相区分切替セクションの出口側のエアセクション.
30) 上り線異相区分切替セクションの出口側エアセクションの中セクション側の架線絶縁部.
31) 上り線異相区分切替セクションの出口側エアセクションの新大阪側の架線絶縁部.
32) 上り線新大阪方のトロリー線へのき電線接続部.
33) 下り線異相区分切替セクションの入口側エアセクション付近からき電区分所の方向を見たところ.