| 隣接セクション | ||||
|---|---|---|---|---|
| 敦賀－南今庄間 交直セクション |  | (金沢方) 湯尾き電区分所 | ||
北陸本線はかつて両端の米原－坂田間と梶屋敷－直江津間が直流1500V電化，中間の田村－糸魚川間が交流20kV 60Hz電化され，坂田－田村間と糸魚川－梶屋敷間（現在はえちごトキめき鉄道に移管）に交直セクションが設置されていましたが，京阪神方面からの新快速電車（直流専用車）を乗り入れ可能にするために，1991年9月に坂田－田村間の交直セクションが長浜－虎姫間に移設され，田村－長浜間が直流化されました．これにより，長浜を訪れる観光客が大幅に増加するなどの効果が見られたため，長浜以北の滋賀県の自治体などから直流区間の再延長が要望されました（いわゆる「琵琶湖環状線計画」）．さらに福井県敦賀市からも直流区間北伸の要望が出されたため，北陸本線長浜－敦賀間および湖西線永原－近江塩津間の直流化工事が行われ，2006年9月23日深夜～翌24日未明に長浜－敦賀間の架線電源を直流に切り替えるとともに同日限りで北陸本線の長浜－虎姫間，湖西線の永原－近江塩津間の交直セクションおよび敦賀駅構内に設置されている北陸本線－小浜線渡り線上の交直セクションが廃止され，敦賀～南今庄間にまとめて移設されました．
また，2024年3月16日の北陸新幹線 金沢－敦賀間の延伸開業に伴い，並行在来線となった北陸本線の敦賀－金沢間のうち，石川県内区間の大聖寺－金沢間は第三セクターのIRいしかわ鉄道に，福井県内区間の敦賀－大聖寺間はハピラインふくいにそれぞれ移管されました．これにより，敦賀－南今庄間の交直セクションもハピラインふくい所属となりました．さらに，大阪－金沢(一部和倉温泉)間を結んでいた特急「サンダーバード」と名古屋・米原－金沢間を結んでいた特急「しらさぎ」の運転区間が敦賀までに短縮されて交流区間への乗り入れがなくなったため，敦賀－南今庄間の交直セクションを通過する定期の旅客電車はハピラインふくい所属の521系のみとなりました．
下り線の交直セクションは北陸トンネル入口の200mほど敦賀寄り，北陸自動車道との交差する手前に設置されています．一方，上り線の交直セクションは下り線よりさらに500mほど敦賀寄り，国道8号線敦賀バイパスと交差してすぐの地点に設置されています．つまり，下り線と上り線の交直セクションの間は，下り線が直流1500V電化，上り線が交流20kV60Hz電化になっています．
このように，下り線と上り線の交直セクションが離れて配置されるのは，下り線は敦賀駅から北陸トンネルの入口まで連続した上り勾配が続くために敦賀駅を発車して十分に加速してから，一方上り線は北陸トンネルを完全に抜けてから余裕を持って切換動作を行えるようにするためではないかと考えられます．
また，下り線の交直セクションは上り勾配の途中に設置されているため，交直セクションの敦賀方（直流側）を断路器Aの切替によって交流20kVでも加圧できるようになっているという，他の交直セクションには無い特徴があります（図A）．これは，直→交切換を行った後，セクション手前で何らかの理由（踏切での非常ブレーキなど）で停止してしまったような場合に，構内直流化前の東北本線 黒磯駅構内と同様な地上切換を行えるようにするためのようです．この場合，交直セクションは交交セクションとして機能することになります．そのため，できるだけ無電区間を短くするために，2つのセクションインシュレータ内の架線に断路器Cを通じて交流20kVを加圧するようになっています（図B）．また，交流加圧時に交流・直流電源の境界となるエアセクションは2重になっており，断路器Bの開放で無電区間を作ることによって万一のパンオーバーによる混触を防ぐ構造になっているようです．
（図A）通常時における架線電源の加圧状態
（図B）非常時における架線電源の加圧状態
関連項目：
文中の色のついた部分をクリックすると写真の該当箇所のマークがON/OFFします．
文中の写真はJR西日本 北陸本線時代に撮影されたものです
1) 敦賀駅構内の直江津方に新設された断路器．
2) 2010年5月時点での断路器の様子．交流のき電線・負き電線を支持する腕金が赤く塗られています．また，「交流き電線注意」の標識が追加されています．
電源種別を表示
電源種別を表示
5) 断路器の直下に設置された機器箱．
6) 機器箱の銘板．DSとはデッドセクション(Dead Section)もしくは断路器(Disconnecting Switch)のどちらかの略と考えられます．
7) 断路器から延びる棒が銀色の箱状の駆動装置に接続されています．この点も黒磯駅の地上切換設備と同様です．
8) 2010年5月の断路器駆動装置の様子．ナンバー表記の色がなぜか変わっています．
電源種別を表示
電源種別を表示
11) エアセクションの先には，列車の最後部がセクションを完全に抜ける位置を示す標識が編成両数ごとに設置されています．2007年6月の東北本線さいたま新都心でのエアセクション溶断事故以降，JR西日本管内のエアセクションにも事故の再発を防ぐためにこれと同じ標識が順次設置されているようです．
12) エアセクション付近の下り線から敦賀港へ向かう貨物支線（敦賀港線）が分岐していますが，2009年3月末から使用休止となっています．撮影当時，線路は残っていたものの，踏切部では線路を横切る形で柵が設置されていました．
13) 踏切から敦賀港方向を見たところ．写真撮影時点で運行休止から3年余り経過しており線路は完全に錆びていました．
電源種別非表示/通常時/非常時
15) 2010年5月の様子．交流き電線を支持する腕金が赤く塗られています．
電源種別非表示/通常時/非常時
17) 2010年5月の様子．上り線（交流区間）の可動ブラケットが下り線（通常時は直流区間）との識別のためか赤く塗られています．
18) 交→直切換を済ませ，惰行で坂を下って交直セクションに進入する上り683系特急「しらさぎ」．
19) 交→直切換を済ませ，惰行で坂を下って交直セクションに進入する上り521系普通列車．
20) 直→交切換を控え，手前の上り勾配を全力で駆け上がるEF81牽引下り貨物列車．
21) トワイライト塗色のEF81単機回送列車も直→交切換に向けて全力で坂を上っていきます．
22) 下り線交直セクションの手前に設置された交直切換標．冒進時のダメージの少ない直→交側の切換ですが，新設されたセクションであるためかよく目立つ点滅灯が設置されています．
23) 交直切換標の先に設置された惰行標．
24) 下り線の交直セクションは上り勾配の途中にあります．そこで，荷が重く加速の悪い機関車牽引の貨物列車用は通常用の交直切換標よりもかなり先に設置されています．
25) 貨物列車用の惰行標．交直セクションのすぐ手前に設置されています．
26) 下り線のき電吊架線の終端部．
電源種別非表示/通常時/非常時
28) 2010年5月の様子．ここも上り線の可動ブラケットが赤く塗られています．
29) 非常時のエアセクションから交直セクションまでの架線柱にはアルファベットの標識が順番に取り付けられています．交直セクション手前で非常停止した際にセクションまでの距離を運転指令に伝えるために設置されています．
30) 木ノ芽川の対岸から見た下り線の交直セクション。
31) 下り線交直セクションのインシュレータ部分を拡大して見たところ．
32) セクションインシュレータの直流側入口にはスライダ状の接続金具が用いられています．
33) 直流側入口を拡大して見たところ．
34) 絶縁継目の脇には機器箱とともにインピーダンスボンドが2つ設置されていますが，大きさと形が全く違うことがわかります．
35) 米原方の直流用インピーダンスボンド．
36) 直江津方の交流用インピーダンスボンド．
37) 下り線交直セクション直下のレールには絶縁継目が2ヶ所挿入されています．常磐線藤代駅構内や廃止された長浜－虎姫の交直セクションと同様に，直流用と交流用のインピーダンスボンドを向かい合わせに設置し帰線電流が絶縁されています．
電源種別非表示/通常時/非常時
39) 2010年5月の様子．ここにも「交流き電線注意」の標識が追加されています．
電源種別非表示/通常時/非常時
41) 2010年5月の様子．よく見ると奥側に帰線用の断路器が1つ追加されています．
42) 断路器を拡大して見たところ．デッドセクションは直流化切替の約1ヶ月ほど前の8月下旬には完成しており，交交セクションとして機能していました．その際は無電区間を短くするためか，この断路器は投入状態にありました．直流化切替後の現在では開放されています．
43) 断路器の直下にある機器箱．敦賀駅そばの交直切替断路器と同様に電動式のようです．
44) 敦賀変電所から伸びる交流正き電線と下り線デッドセクションの直江津方（交流側）のトロリー線が接続されています．
45) 下り列車は交直セクションを過ぎるとすぐに木ノ芽川を渡り，北陸トンネルに入っていきます．
46) 北陸トンネルの入口(踏切から望遠レンズで撮影)．トンネル入口横の壁にデッドセクションの出口を示す力行標が設置されています．
47) 上り線交直セクション手前にある交直切換標．下り線の交直セクション横を過ぎてすぐの所にあります．冒進時のダメージが大きい交→直切換を確実に行わせるため，点滅灯で目立つようになっています．
48) 上り線交直セクション手前の架線死区間予告標．こちらにも点滅灯が設置されています．
49) 上り線交直セクション入口の手前では，敦賀変電所からの交流き電線がトロリー線に接続されています．
50) 2010年5月の様子．他の場所と同じく，交流側の可動ブラケットが赤く塗られています．
電源種別非表示/通常時/非常時
52) セクションインシュレータを拡大してみたところ．吊架線がポリマー碍子で絶縁されており，JR西日本の他の交直セクションとほぼ同じ，ごく一般的な構造です．
53) 2010年5月の様子．時間の経過によりセクションインシュレータが黒ずんでいます．
54) セクションインシュレータとポリマー碍子をさらに拡大して見たところ．設置直後はFRPインシュレータも新品で真っ白でした．
55) 2010年5月の様子．交流側入口のセクションインシュレータは真っ黒になっています．
56) 上り線の交直セクションを反対側から見たところ．
57) 上り線のセクションインシュレータを反対側から見たところ。
58) 交直セクション直下のレール絶縁部分に設置された交流用インピーダンスボンド．
59) 交流用インピーダンスボンドと向かい合わせに直流用インピーダンスボンドが設置されています．
60) 上り線交直セクション直下のレール絶縁部．
61) 上り線交直セクションを通過する681系大阪行き特急「サンダーバード」．
62) 上り線交直セクションを通過する683系大阪行き特急「サンダーバード」を下り線側から見たところ．
63) 上り線交直セクションの直流側出口に設置された力行標．敦賀駅構内のすぐ手前にあります．
64) 上り列車先頭からの前面展望．第一閉塞信号機の先に点滅信号の付いた交直切換標が見えます．
65) 架線死区間予告標を通過．先に見えるのは大蔵踏切です．
66) 左にカーブしながら大蔵踏切を通過．交直セクションはもうすぐです．
67) 交直セクションを通過．
68) 力行標を通過し，交直セクションを抜けます．余座踏切の向こうに敦賀駅の場内信号機が見えます．
69) 上り線交直セクションを通過する521系敦賀行き普通電車．
70) 上り線交直セクションを通過する683系特急「しらさぎ」．
71) 上り線交直セクションを通過する683系特急「サンダーバード」．
72) 直流化切替当日の下り旅客一番列車（敦賀発5:52普通金沢行き）．
73) 直流化切替当日の上り旅客一番列車（福井5:05発・敦賀着5:46快速米原行き）．
74) 交直セクションに進入するEF510牽引下り貨物列車．
75) 直→交切換操作を済ませ，惰力でセクションへの上り坂を通過するサンダーバード．
76) 交直セクションを通過する683系特急サンダーバード．4000番台の特徴であるシングルアームパンタグラフが無電区間に進入していきます．
77) 直→交切換操作を済ませ，惰力でセクションへの上り坂を通過する419系普通列車．2011年3月ダイヤ改正で定期運用を終了し，全車廃車となっています．
78) 交直セクションを通過する419系下り普通列車．
79) 上り線交直セクション脇を通過する札幌行き寝台特急「トワイライトエクスプレス」．
80) 下り線交直セクションを通過する681系特急「サンダーバード」．
81) 下り線交直セクションを通過する683系特急「サンダーバード」．
82) 下り線交直セクションを通過する683系特急「しらさぎ」．
83) 下り線交直セクションを通過する521系普通電車．
84) 下り線交直セクションを通過する札幌行き寝台特急「トワイライトエクスプレス」
85) 上り線交直セクション脇を通過する札幌行き寝台特急「トワイライトエクスプレス」の最後尾，スロネフ25．